3月29日に行った産業厚生委員会の所管事務調査の詳細、3回目は福地産業株式会社が行う小水力発電の取組について調査いたしました。同社では太陽光発電にも取組んでおりますが、水力発電所は3か所あり、そのうち2か所の現地説明を再生可能エネルギー事業部の方にしていただきました。
◆大霧水力発電所(令和3年6月1日運転開始:霧島市牧園町万膳)
最大出力:49.9kw 最大使用水量:0.08㎥/s 発電電力量 42万kwh/年 CO2削減量:128t/年
水車:縦軸ペルトン水車 定格電圧:200v 定格電流:172A 定格回転数:1150~1495rpm
水圧管 長さ:570m 総落差:91.1m 直径300m
◆川床水力発電所(令和4年6月15日運転開始:霧島市牧園町三体堂)
最大出力:49.9kw 最大使用水量:0.29㎥/s 発電電力量 42万kwh/年 CO2削減量:128t/年
水車:クロスフロー水車 定格電圧:200v 定格電流:172A 定格回転数:850rpm
水圧管 長さ:80m 総落差:28.64m 直径400m
【小水力発電の開発手順】
1.地点の選定⇒水量と落差のある場所
2.出力、発電所敷地、水路ルート、適用水車の種類等を調査
3.周辺の立地環境(関係法令、既得水利権、送電線)
4.流量測定(約1年間)や測量をして発電計画を立てる。
5.開発費用、開発工期などをつめる
6.収支計算等の経済性評価を行い、事業として成り立つか検討。
7.関係法令の許認可取得と系統連係に係る電力の申し込み(売電仮契約)
「再エネ特措法施行規則の改定により、2022年度~2024年度は、地域活用要件を満たしたものに限りFIT制度の新規認定を認める」
①自家消費型・地域消費型の地域活用要件(3種類)
②地域一体型の地域活用要件(3種類)
※①②の内から、いずれか1種類を満たすことが条件
8.経済産業省へ「再生可能エネルギー発電事業計画の認定申請」を行い認定取得
9.事業認定が下りてから申請する関係法令
「農地法(農振除外、転用)、国有林の貸付、保安林内の行為許可等」
10.発電所を建設
※水車・発電機等の機器製作は、発注から1年以上かかる場合もあるので要注意
11.一定期間以上の運転を継続するための仕組みを構築(O&M)
水力発電は最大出力により呼び名が分かれます。3000kW以上が大規模水力、3000kW未満を中小水力と呼び、中小水力のなかで、1000kW以上を中規模水力(再生可能エネルギー特別措置法により、新エネルギーとして位置付けられている)、200kW以上1000kW未満は小水力またはミニ水力とも呼ばれる(再エネ推進後、水力の中では最も数を増やしている規模)、200kW未満は決まった呼び名はありませんが、FIT(固定価格買取制度)の価格境界となっている。そして、100kW未満はマイクロ水力と呼ばれ多種多様な水車が開発されている。さらに50kWを境に電力会社との連係契約が異なる(50kW以上:高圧、50kW未満:低圧)。ですので、今回視察調査した2か所とも50kw未満の低圧連携のマイクロ水力発電と言えます。それぞれ年間発電量約42万kwh/年は一般家庭の約117世帯分に相当するので、大霧水力発電は万膳校区305世帯の消費電力の1/3以上、川床水力発電は三体校区217世帯の消費電力の1/2以上を賄っている計算になり、目指すエネルギーの地産地消に貢献していると言えます。
小水力のメリットは、①ある程度の流水があればどこでも発電できる②太陽光発電や風力発電と比べて、天候に左右されにくい③大型の水力発電のように自然破壊につながらない④発電時に二酸化炭素が発生しない⑤発電時の燃料費がかからない⑥設備利用率が約60%と高い⑦売電収入を得られる。などがあり、
小水力のデメリットとしては①法的手続きが煩雑②フィルターの清掃などメンテナンスが必要③流水がない場所(落差がない場所)では発電できない④水利権や河川法などの問題をクリアしなければならない。などがあります。
今後のエネルギー事情を考えると、原子力発電は国が最大限活用する方針を示しておりますが、既存の高経年化した原子力発電所がどこまで稼働できるかわかりませんし、次世代原発の開発もそう簡単ではありません。火力発電は温室効果ガスを排出し地球温暖化の原因になり、発電のためには化石燃料の輸入が必要なうえ、エネルギー価格高騰、そしてカーボンニュートラルの面からも今後さらに使用しない方向で進められると予想もされます。太陽光発電や風力発電は天候任せの部分があり、ベースロード電源としては不安が残る。そういったことを考えると、小水力発電を含めた水力発電全般は、今後さらにその価値が見直され、より導入しやすい体制に向かうように感じます。本市でもこの小水力、マイクロ水力発電などもおこなわれ、エネルギーの地産地消が実現する未来へ近づくことを期待しながら調査を終えました。