使用済燃料中間貯蔵施設

放射性廃棄物や使用済み核燃料などを最終処分場または核燃料再処理工場へ運ぶ前に一時的に保管する施設は中間貯蔵施設と呼ばれており、東京電力福島第一原発事故に伴う除染で発生した汚染された除去土壌などは、原発に隣接する中間貯蔵施設に一時保管されており、政府は保管を始めた2015年から30年後の2045年には汚染土を福島県外の最終処分場に搬出することを約束していいますが、原発事故で汚染されたごみを受け入れる自治体があるのかは分からず、候補地は未定で、今後大きな問題になることが予想されます。そういったなか山口県熊毛郡上関町で新たに使用済燃料中間貯蔵施設の設置に係る検討がなされていると、昨日報道がありました。

中国電力は8月2日に、上関町長からの地域振興策の検討要請に対し、島根原子力発電所の安定稼働に資する使用済燃料対策の一環として、また、上関町の地域振興に向けた新たな選択肢の一つになりうる取り組みとして、上関町大字長島の中電所有地内において使用済燃料中間貯蔵施設(以下は「中間貯蔵施設」という)の設置に係る検討を進めることとし、立地可能性を確認するとともに、計画の検討に必要なデータを取得するための調査を実施したい旨、上関町長に回答しましたとのことです。

また、その中間貯蔵施設の検討にあたっては、施設規模や経済性等を勘案する中で、中電単独での建設・運営は難しいと判断し、中電と同様に中間貯蔵施設のニーズがある関西電力との共同開発を前提に、今後、調査・検討を進めていくことも発表され驚きました。

関西電力とは電力カルテル(事業者向けの電力供給をめぐり、大手電力会社が互いに顧客獲得を制限するカルテルを結んだとして、公正取引委員会が、中国電力、中部電力と販売子会社・中部電力ミライズ、九州電力に対し、独占禁止法違反(不当な取引制限)で高公正取引委員会の課徴金納付命令としては過去最高額の総額約1010億円の課徴金納付命令を出した)での処分に関連して、中国電力からも「関西電力が主導なのに、関西電力に課徴金がないのは納得ができない」との声があって(主導した関西電力は調査が始まる前に違反行為を最初に自主申告したため、課徴金は免除され、排除措置命令も受けていない)の今回の共同開発でしたので、驚いたわけです。

具体的な計画は、調査・検討結果を踏まえて策定予定のようで、中間貯蔵施設の設置は、上関町の地域振興や島根原子力発電所の安定稼働に資することに加え、原子力事業者の連携による貯蔵能力の拡大計画の実現に向けた取り組みの強化という我が国のエネルギー政策にも合致し、ひいては、西日本の電力の安定供給にも寄与する取り組みであると考えられているようです。

調査の概要として以下の4点が公開されておりました。

<調査の概要>
1.目 的

上関町大字長島の当社所有地内において、使用済燃料中間貯蔵施設の立地が可能かどうかを確認するとともに、具体的な計画の検討に必要なデータを取得する。

2.調査場所

上関町大字長島の当社所有地内(東側部分)

3.調査内容
文献調査、地表地質踏査、ボーリング調査 等

4.現地調査期間
半年程度(準備が整い次第、調査を開始)

背景には福島事故後に中断している上関原発建設が見通せない状況が続き、地元経済界が期待した「原発マネー」の恩恵はなく、上関町長から今年2月、中国電力に新たな地域振興策の要求があったようで、今回の提案はそれへの答えとなる形のようです。町が調査に同意すれば、国から県と町に毎年計1億4000万円が交付される見通しとのこと。

また関西電力は国内最多の原発6基が稼働し、原発内の使用済み核燃料プールが今後5~7年で満杯になる見通しで、中間貯蔵施設の選定期限が迫りつつある中、6月には一部をフランスに搬出する「奇策」(フランスの再処理工場に少量の使用済み核燃料を搬出する計画を県に報告)を示したものの根本的な解決には程遠く、国内で唯一建設済みの中間貯蔵施設(東京電力と日本原子力発電が共同開発)は青森県むつ市にあり、関西電力はこの施設の利用を模索しましたが、地元の猛反発で頓挫した経緯があり、国内での保管場所確保が難しいことが如実に示されております。中長期にわたって利用できる施設の候補地確定は、将来の原発の安定稼働に向けた生命線と言えるわけでありが、福井県との約束は今年末までに候補地を確定させる必要があり、他社の原発予定地を利用する更なる奇策がその答えになりえるのかは今後の状況次第というわけです。

原発マネーに期待する地元住民、経営体力不足の中国電力と使用済み核燃料の保管先確保が急務の関西電力、そして上関原発建設も中間貯蔵施設建設にも反対する地元住民。今回の中間貯蔵施設に関する動きが、また周辺で暮らす人々に賛否の対立構図を生じさせることになり、心が痛みます。原発計画さえなければ、そもそも原発に頼らざるを得ない電力事情などが続く限り、こうした課題はなくならないと思います。いきなりは不可能でも、地球温暖化防止に努め、外部からの攻撃やテロの標的の危険性のある原発に頼らないエネルギー構成になるような、それでいて経済力低下などリスクを最小限に抑えながら未来を考えた施策を政府の主導で推進していくことが求められます。高レベル放射性廃棄物の最終処分なども含め様々な大きな課題がある今の原発依存社会では、ただ静かに平穏に暮らしたい住民たちの地域社会を分断する状態を招き、どちらもが望んでなかった未来が残るような気もします。

私は3月議会の陳情第11号に対する不採択の立場での討論でも申しましたが、出来るだけ早く有事の標的や、重大事故のリスクにおびえながらの生活からの脱却、再生可能エネルギーで暮らせる、原発に頼らない社会実現へ向け、戦略的な節電対策を、段階的に実施しながら、まず40年を超えるような原発が、運転延長しないで済む方向へ国主導で早急に取組むべきと考えますし、脱原発社会が実現することを望んでおります。

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